大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和39(オ)292 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告人の上告理由第一点について。

原審の確定したところによれば、上告人が訴外Dから本件建物部分の賃借権の譲

渡をうけるにつき賃貸人の承諾を得た旨の上告人主張事実については立証がなく、

原判示の事実関係のもとにおいては被上告人主張の賃貸借解除は有効であるという

のである。そして、原審の右事実認定ないし判断は挙示の証拠により是認できる。

所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨、事実の認定を非難するに帰

し、採用できない。

同第二点について。

原審の確定したところによれば、被上告人の代理人である訴外Eは、昭和三五年

一一月三〇日本件元家屋の残代金四〇〇万円を支払つた際、訴外Fに対し、原判示

の経緯目的から被上告人にとり殆んど無価値となつた本件元家屋を取毀し収去して

くれるなら右家屋の素材全部を贈与する旨申し出たところ、同訴外人においてこれ

を承諾したというのであり、右合意の内容は家屋の取毀しをなすことを主眼とする

ものであつて、取毀しをしないまゝで本件元家屋の素材を贈与するというのではな

いところ、右家屋中本件係争部分は原判示の経緯により未だ取毀されておらず、し

たがつてその所有権は依然被上告人に存するというのである。そして、原審の右事

実認定ないし判断は挙示の証拠により是認できる。所論は、原審の専権に属する証

拠の取捨、事実の認定を非難し、右認定にそわない事実を前提とし独自の見解に基

づき原判決を非難するものであつて、採用できない。

上告代理人江川庸二の上告理由第一点について。

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原審の確定したところによれば、原判示の理由により、訴外Gが本件家屋部分の

賃借権譲渡承認につき賃貸人たる訴外F外二名の代理権を有していたことについて

は立証がないというのであり、原審の右認定は挙示の証拠により是認できる。所論

は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨、事実の認定を非難するに帰し、

採用できない。

同第二点について。

原審の確定したところによれば、訴外Hは昭和三五年一〇月頃本件家屋部分から

退去し、賃借権譲受人たる上告人が爾来右家屋部分を全面的に占有しているという

のである。そして、原審は、右の事実および原判示の本件における事実関係のもと

においては、本件賃借権無断譲渡に背信的行為と認めるに足らない特段の事情が存

するとはいえないとして、民法第六一二条による解除権の発生を認めているのであ

り、原審の右事実認定および判断は挙示の証拠により是認できる。所論は、ひつき

よう、原審の右認定を非難し、右認定にそわない事実を前提とし、独自の見解に基

づき原判決を非難するものであつて、採用できない。

同第三点について。

所論権利濫用に関する主張は原審においてなされていないだけでなく、本件にお

いて右主張の理由のないことは明らかであるから、所論は採用できない。

同第四点について。

原審は、賃貸人訴外F外二名と賃借人訴外H間の本件家屋部分の賃貸借契約が賃

貸人の一人であるI名義でなされ、賃貸借契約書にも賃貸人代表者としてI名義が

表示されていたところから、賃貸人ら代理人であるFがI名義で所論の賃貸借解除

の意思表示をした旨の事実を認定していることが、判文上明らかである。そして、

右の事実によれば、本件賃貸借解除の意思表示が有効であるとする原審の判断は正

当である。所論は、原審の前記認定にそわない事実を前提とする主張であつて、採

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用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 横 田 正 俊

裁判官 石 坂 修 一

裁判官 五 鬼 上 堅 磐

裁判官 柏 原 語 六

裁判官 田 中 二 郎

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